桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
「待たせてすまない」
「いいえ、でもどうしてこんな大きなケーキを?」
ただ単純な疑問を口にしただけのつもりだった、匡介さんは普段無口で考えてることがあまり分からないから。思いが通じ合ったからと言って匡介さんが饒舌になるわけじゃない、いまでも本人に聞かなきゃ分からない事ばかりで。
「君に、杏凛にお礼がしたかった。だが俺ではこんなものしか思いつかなくて」
「お礼? いったいなんのですか?」
私が匡介さんにお礼を言うことはあっても、私がそうされる理由が思いつかない。それもこんな大きなケーキ用意して。
私がそう訊ねると、匡介さんは私に椅子に座るように促して、自分も私の真正面に腰かけた。
「一年間、俺の傍にいてくれてありがとう。ただそれを杏凛に伝えたくて」
「一年……? え、今日はもしかして」
そう、一年前のこの日私たちは夫婦になったのだった。匡介さんの言うままに盛大な式を挙げ戸惑いながら彼との暮らしが始まったのだわ。
私がすっかり忘れてた記念日を、匡介さんはちゃんと覚えててこうしてケーキまで準備してくれたなんて。
「今夜は絶対に杏凛を一人になんてしない、去年と同じような苦しみを君にさせたりしないから」
「匡介さん……」
そうして二人で食べたケーキは今までで一番甘くて、二人がフォークを置いたその時が甘美な夜の始まりの合図だった。