桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
「匡介さんがそうおっしゃるのならば……」
「ああ、そうしてくれ」
こんな時でも素直に嬉しいという感情を見せる事の出来ない私、でも匡介さんはそんな私に嫌な顔をしたりはしない。いつも通りの無表情なまま、会計を済ませる横顔からは彼の考えを知ることは出来ない。
たくさんの服を匡介さんに持たせられるわけもなく、スタッフに配送を頼むと二人で店を出る。思ったよりも時間が過ぎていたようで、お腹がくうっと音を立てる。人ごみの中そんな小さな音は、きっと匡介さんには聞こえないだろうと思っていたのに……
「そろそろ昼食にしようか、杏凛。君は何か食べたいものはあるか?」
「……え? ですが、まだ匡介さんは早く帰って休みたいのでは?」
疲れているはずの彼をあまり付き合わせるのも悪いと思い、なるべく早く家に帰るつもりだったのだけれど匡介さんは違ったらしく……
「さっき少し休んだから問題ない、俺が今優先したいのは睡眠ではなく杏凛との時間なんだ」
「……そうですか」
それならば何故、昨日の夜は私を一人置いて行ったのですか? その理由を話してくれないのはどうして? 私が一番知りたかった事は教えてくれなかったくせに。
なんて、自分で聞くことも出来ない意気地なしの私が言えることでもなくて。そんな中で匡介さんの言葉をどこまで信じていいのか、私はまだ分からないままだった。