桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
匡介さんはそのまま私を軽々と抱き上げると、会計を済ませてスタスタと店の外へと歩き出してしまう。私は発作の苦しさもあって、そんな匡介さんの胸に甘えるようにしがみついてしまって……
「そうだ、君はそうしていると良い。すぐに楽になれる場所に連れて行く」
匡介さんはそんな私に優しい言葉をかけて、この身体を抱く腕に力を込めたようだった。本当はお礼の一つも言うべきなのにそれも出来ず、彼の腕の中で荒い呼吸を繰り返していた。
どこに行こうとしているのか、匡介さんの歩くスピードは速い。それでも彼は私に負担がかからないように丁寧に運んでくれているのが分かる。
「きょ、う……けさん、あの……」
「杏凛、今は無理をして話そうとしなくていい。だから、こんな時くらいは夫の俺を頼ってくれないか?」
すぐ傍から聞こえてくる低い声は真剣そのもので、心の奥をじんわりと温めていくように感じる。こうして優しくするのに、昨日は一晩中私を一人にしていたり……ねえ、貴方は私をいったいどうしたいの?
思いやりが嬉しい気持ちもあるけれど、彼に対する隠しきれない不安も同じようにこの心の中にはある。
そんな余計な考え事をしてしまったせいか乱れた呼吸はなかなか整ってくれず、私はただ匡介さんの広い胸に顔埋めている事しか出来なかった。