桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
なんとなく今は匡介さんの顔を見ることが出来なくて、シーツを被った状態のまま壁側を向いてしまった。どうしていつも、彼に対してこんなに可愛げのない態度を取ってしまうの?
「杏凛、もう少しすれば主治医の鵜方先生が来てくれるそうだ」
「わざわざ先生にお願いしたのですか? こんな事くらいで大げさな……」
普段の私なら発作が起きた程度ではわざわざ主治医を呼ぶ事などしない、それは結婚前に匡介さんにも説明したはずなのに。
「君はそう言うかと思ったが、新しい生活を始めたばかりなんだ。用心して診てもらっておくに越したことは無い」
確かに今までと違う環境や匡介さんの存在、それが私の精神状態を大きく変化させてくるのは事実で……
この結婚で私は迷惑かけないように生活することだけを考えていたのに、この身体も心も思い通りにはいかない事が悔しい。
「……迷惑をかけてすみません」
「杏凛はいつもそればかりだな、俺に謝る必要はないと何度も言っているのに」
確かにいつもいつも自分が謝らなければいけないことが多すぎて、匡介さんにはそう感じるのかもしれない。だからと言って何度そう言われても、ただ一方的に彼に甘える事なんて出来るわけもない。
私はこの結婚生活で匡介さんに与えられるものなど何一つないのだから……