桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
「杏凛、スタッフから氷を貰ってきたからこれで……」
匡介さんは氷水の袋を私の目元にそっと当ててくれる、少し熱を持っていた目の周りがじんわりと冷やされて気持ちが良い。
その様子を心配そうに見ている彼に、さっきの事を聞いてみることにした。
「匡介さんと私って、知り合ってから長いですよね。ほとんど話したことも無かったですけれど……」
「ああ、そうだな。俺が杏凛を紹介されたのはまだ小学校に上がってすぐの頃だったと思う」
匡介さんとの初めての出会い、そんなのは幼すぎて覚えていない。でも彼はちゃんとその時の記憶があるらしい。それならなおさら……
「あの……匡介さんが私に必要以上に過保護になるのは、幼い頃から知っている私を妹のように思ってくれているからですか?」
「……は?」
珍しい、匡介さんはこんな間の抜けたような声を出すなんて。私の考えが当たっていたのか、それとも全く違っていたのか。じっと彼の返事を待つ。
「……聞いていいだろうか、杏凛はいったいどうしてそんな事を考えたんだ?」
ドキドキして答えを待っていたのに、匡介さんに質問で返されてしまう。だけど聞かれて困ることもないので、自分がどうしてそう考えたのか素直に話す事にした。