桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
「杏凛、大丈夫か? 目が真っ赤になってしまっているぞ、見る映画を間違えてしまったか?」
映画を見終えたはずなのに、私達はまだ映画館のロビーに設置されたソファーに座っている。その理由は匡介さんが選んでくれた映画で私が大泣きしてしまい、涙が止まらなくなってしまったから。
普段泣いたりすることはほとんどないのに、テレビや映画ではもの凄く涙もろかったりする。今回見た作品は実話をもとにした感動的な物だったので余計に……
「いえ、いいんです。とても素晴らしいお話でしたし、匡介さんは気にしないでください」
私はまだ匡介さんがどんな映画を好むのかを知らなかった、家にいる時も彼はニュース以外はほとんどテレビを見ないから。
「しかしそのままでは目が痛むだろう? 少し待っててくれ、何か冷やすものを用意できないか聞いてくる」
「そんな、大げさな。本当に私は大丈夫なので……!」
この程度ならペットボトルでも買って冷やしておけば大丈夫だと思う、匡介さんは心配し過ぎなのではないかしら?
けれど私が止めるのも聞かず匡介さんはフロアのスタッフに近付き話しかけた。
「本当に匡介さんって過保護で心配性で……あら?」
ふと気付いてしまった、匡介さんが私にそうなのは契約結婚とはいえ妻という立場の人間だからだけではないのでは、と。
過保護で心配性……それは別の関係でもよく聞くものだったから。