彼と彼女の取り違えられた人生と結婚

 少しして。
 注文した料理が持ってこられた。

 美味しそうなデミグラスソースハンバーグが、鉄板に乗っていて、ライスとコーンスープとサラダがセットについている。
 ジュージューと音を立てて、焼き立ての美味しそうな匂いがしてくると。

 グーっと樹里のお腹が鳴った。

「あ…」

 お腹が鳴ったのを感じた樹里は、久しぶりの感覚にちょっと驚いていた。

「どうぞ食べて下さい。ここのハンバーグは、とてもお勧めです。このメニューは、俺のお気にいりばかりなんです」

 お気に入りばかり…
 私になんて…

 そう思いながら、樹里は少しづつ食べ始めた。

「…美味しい…」

 思わず言葉に漏らしてしまい、樹里はちょっと恥ずかしくて俯いた。

「美味しいですよね、お肉がとっても柔らかくてジューシーですし。ソースもこのお店の手作りで、とても良い味が出ていますから。それに…」

 柊はそっと樹里を見つめた。…。

「樹里さんが一緒ですから、一段と美味しいです」

 樹里を見つめながらそう言った柊が、ほんのりと頬を赤くした。

 樹里は視線を落としたままで、そんな柊には気づかないままだが、言葉が何だかくすぐったく感じた。


 ゆっくりと食べながら、途中で柊がボソッと何かを話す事に対して、樹里が頷くか小さく返事をすだけの会話だが。
 なんとなく楽しそうな雰囲気で、なごんでいた。



 食べ終わってアフターは、お勧めの珈琲を飲んでいた。
 夜に珈琲を飲むと眠れなくなると、樹里はよく言われていたがそんな事は気にしないでゆっくり飲んでいた。

 香りがとてもまろやかで、甘いような匂いが漂ってくるが味はコクがある不思議な珈琲だった。



「樹里さん。この後、俺に付き合って頂けますか? 」
「え? 」

「樹里さんと…一緒に行きたい場所があるのです」

 一緒に行きたい場所と言った柊が、また赤くなっていた。
 
 なんで赤くなるのだろう?
 樹里は不思議な気持ちだった。

 

 食べ終わってカフェを出ると。
 
 柊がぎゅと樹里の手を握ってきた。

 とても暖かい手に握られると、頑なだった樹里の気持ちもほんわかになってゆくのを感じだ


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