彼と彼女の取り違えられた人生と結婚

 現れた女性は上野坂樹里(うえのさか・じゅり)28歳。
 不動産王と呼ばれる上野坂財閥の娘で、検察官である。
 女性にしては長身で推定175cmはありそうな大柄で、体系はやせ型。
 かっちりした黒いスーツに、膝下のタイトスカートに黒いパンプス姿はキャリアウーマンそのものである。
 綺麗な顔立ちに瞳の色がちょっと紫っぽく、どこか神秘的に見え、分厚い縁取りの大きい眼鏡をかけて、インテリーに見えるが唇がプルっとしてとても魅力的である。
 
「突然の無礼をお許し下さい。息子様の柊さんと、結婚させて頂きたく本日は参りました」
「え? 柊と? 」

「はい。柊さんと結婚させて頂ければ、お礼としてこちらから結納金100憶円をご用意い致します」

 100憶円と言われて、宇宙はドキッとした。
 偶然なのか? それとも天の助けなのか?
 このタイミングで100憶とは。

「私は構わないと思います。しかし、結婚するのは柊なので一度会って頂けますか? もちろん、結婚は承諾しますので」
「判りました。それでしたら、お会いします」

 そのまま宇宙は席を立ち、柊に内線をかけた。

 
「しばらくお待ちください。柊が、ここに来ますので」

 席に戻って来た宇宙は、じっと樹里を見つめた。

 ちょっと伏し目がちな樹里を見ていると、宇宙は胸がキュンとなった。

 この子は風香に似ている。
 何かを内に秘めているようで、グッとこらえた様な表情をして目を伏せている表情は記憶障害だった風香と同じだ…。
 それに、瞳の色…メガネをかけているけど、僕と同じ色のような気がする。
 本当にこの子が柊とけっこんしてくれるのかな?
 

 そんな事を思いながら、宇宙は樹里を見ていた。
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