彼と彼女の取り違えられた人生と結婚
暫くして柊がやって来た。
爽やかなブルー系のスーツに身を包んだ柊は、宇宙とは対照的なイケメンで、クールな切れ長の目に長めの前髪がサラッとかかっている姿がたまらなく色っぽく見え女性なら胸がキュンとなり虜になりそうだ。
シャープな輪郭にスッと高い鼻、細めの唇が魅力的である。
気になる部分は瞳が赤い色である事。
親子であるが宇宙とは似ていない柊。
「柊、仕事中にすまないな。こちらの方は、上野坂樹里さん。上野坂財閥のお嬢様だよ」
ゆっくりと目を動かし、柊は樹里を見つめた。
樹里は軽く柊と目を合わせると、そっと会釈をした。
「実は、こちらの樹里さんが柊との結婚を申し出てくれているんだ」
え? と、軽く目を見開いた柊。
「私は何も反対しない。柊さえよければ、この話を進めてゆきたいと思うのだが。どうだい? 」
暫く樹里を見つめたまま柊は黙っていた。
今の会社の状況を知っていて言ってくれている事なのか?
こんなに綺麗な人がどうして?
でも見ていると胸がキュンと鳴るのはどうしてだろう?
こんな気持ち初めてで…どうしたら良いのか分からないけど。
この人と結婚したい。
柊はそう思った。
樹里はそっと視線を反らしたまま柊の答えを待っていた。
「…こんな俺でも、いいのでしょうか? 会社を潰してしまいそうな俺だけど…」
男性にしては綺麗な声の柊に、樹里はドキッとした。
「ご状況は拝見しております。全てを承知の上で、申し出ている事です」
じっと柊は樹里を見つめている…。
しかし樹里は柊と目を合わそうとはしてくれない。
どこか罪悪感でも感じているような、そんな目をしている…。
「…有難うございます。喜んでお受けします」
じっと見つめていた目をそっと微笑みに変えて、柊が言った。
柊の返事を聞くと、樹里はほっとした表情を浮かべた。
「有難うござます。それでは、早速ですが結婚に向けて準備を始めさせて頂きます。一度、父とも顔合わせをして頂きたいと思いますので後日、またご連絡いたします」
それだけ言うと頭を下げて、樹里はその場を去って行った。