彼と彼女の取り違えられた人生と結婚

「もうお昼ですね、レストラン街へ行きましょうか」

 ギュッと手を握って来た柊。
 
 何となく樹里はモヤっとしたが、そのまま手を繋いで柊とレストラン街へ向かった。



 レストラン街は、お昼の時間帯になってきて人が込み合ってきていた。


 まだ混雑していないイタリアンの店に入った柊と樹里。

 おすすめランチは、シラスのパスタ。
 美味しそうなしらすと、シソが乗っていてさっぱりして食べやすい。

 器もオシャレな花柄で可愛らしい。

 セットにはコールスローサラダと、アフターにドリンクもついている。


 食べながら柊は、小さい頃はナポリタンが大好きで、いつも鉄板に卵を敷いて作ってもらう事が楽しみだったことを話してくれた。
 亡くなった実の母風香は、パスタが得意で休みの日のお昼はいつもパスタを作ってくれていた。

 そのナポリタンを食べる事が、柊はとても楽しみだったが。
 風香が亡くなってからずっと食べる事がなく、今日は久しぶりにパスタを食べたと話していた。




 ランチを済ませて。
 次に柊と樹里が向かったのはジュエリーショップ。

「樹里さん、結婚指輪まだだったから買おうと思っているのですが」
「え? そんなの、今更いいです」

「そんなこと言わないで下さい。…あ、この指輪がいいかな? 」

 ショーウィンドーの中の指輪を指して、柊が言った。

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