彼と彼女の取り違えられた人生と結婚
その後。
柊と樹里は着替えを済ませて、駅前のショッピングモールに行った。
とりあえず必要な日用品だけを揃えて過ごしていたこの2ヵ月。
ベッドカバーも家にある分を使っていた事から、新しい物を購入した。
そして…。
「樹里さん。使っているベッドですが、ダブルベッドにしようかと思うのですが」
「え? 今あるベッドでいいですよ」
「それでもいいのですが。やはり一緒に寝たいと思うので…」
ほんのりと頬赤くして、視線を落とした柊。
そんな柊を見て、樹里は素直に可愛いと思えてしまった。
そのまま売り場に置いてある、ダブルベッドに歩み寄って行った柊はベッドのスプリングを確認した。
「これいいですね、柔らかすぎないし。クイーンサイズで広いですから」
ベッドに触れて嬉しそうに笑っている柊を見て、樹里はちょっと複雑そうな顔をしていた。
一緒に寝る事が嫌ではないが、2ヵ月の間別々で寝ていたことから今更一緒に寝てもなぁ…と思う気持ちと、ちょっと恥ずかしい気持ちがあった。
「決めました。これに」
柊はそのままレジへ向かい、ベッドの注文の手続きをしに行った。
樹里は他の寝具を見るために、店内を歩き始めた。
すると…。
ふい視界に入ったエスカレーターに、見覚えがある姿を目にした樹里は足を止めた。
ニコニコと笑いながら、随分と若い格好をしたメガネをかけた人。
その人は…宇宙だった。
そして宇宙の隣には、綺麗な金色の髪の長い女性がいる。
シックな茶系のワンピースに黒いパンプス。
女性にしては背が高く、宇宙とあまり身長差がない。
シャープな輪郭に、スッと高い鼻、唇は魅力的で、分厚いフレームのメガネをかけているが目元がどこか柊と似ているような感じの女性。
その女性を見ると…樹里の顔色が変わった。
「…お母…さん? 」
驚いた目を向けたまま、小さく呟いた樹里。
宇宙は樹里に気が付かないまま、エスカレーターでそのまま女性と一緒に下へ降りて行った。
「…あの写真は、本当だったのね? …」
驚いていた樹里の目が、だんだんと怒りに満ちた目に変わって行った。
「許せない…ずっと心配しているのに…」
ギュッと拳を握りしめ、樹里はバッグを握りしめた。
「樹里さん、お待たせしまた」
柊が戻ってきて声をかけると、樹里はハッと顔色を変えいつも通りに振り向いた。