彼と彼女の取り違えられた人生と結婚


「樹里さん、お待たせしました」


 柊が戻って来た。
 指輪が入っているだろうと思われる、小さめの紙袋を手に嬉しそうな表情の柊。

「じゃあ、そろそろ帰りましょうか」

 そう言って柊は樹里の手をとって歩き出した。



 初めてともいえる柊とのデートとも言えるショッピングモール。
 しかし、そんな場所でまさか…宇宙と女性が一緒にいるところを目撃するとは夢にも思わなかった樹里。
 しかもその相手の女性は…。






 柊と樹里が家に戻って来たのは17時頃だった。

 買ってきた食材で、樹里は夕食の準備を始めた。

 今夜はビーフシチューを作るため、ジャガイモの皮をむいて下ごしらえをしている樹里は、何か思いつめたような表情を浮かべていた。

 柊は明日の仕事の準備の為、自分の部屋にこもりパソコンのチェックをしていてリビングにはいなかった。



 具材を切り終えて、暫く煮込むため樹里は食卓の椅子に座り一息ついた。

 ポケットに入れている携帯電話を取り出した樹里は、フォルダーの中を開けてみた。


 フォルダーには。
 ちょっと古い画像のようだが写真が入っている。

 家族写真のようで、樹里がまだ中学生くらいの頃で家族全員で写した写真のようだ。
 優の隣にいるのは、この世の人とは思えない程とても綺麗な女性。
 綺麗な金色の髪に、白いと言うより青白いと言っていいほどの白い肌をしたまるでどこかの国のお姫様のような顔だちで、綺麗な切れ長の目に赤い瞳をしたクールなタイプの女性。
 優と並んでも背が高く、170cm以上はある大柄で、スタイルも良く着ているシックな茶色いワンピースは膝丈で履いている黒いパンプスは踵は低めである。
 微笑んでいる表情はどこか遠くを見ているような目をしていて、幸せそうに見えるが何となく寂しげな目をしているように見える。
 樹里とは似ていないタイプの女性で、よく見ているとどこか見覚えがあるような顔だちの女性。

「…お母さん…どうして、あんな人と一緒にいたの? 」

 小さく呟いた樹里。


 カチャ…。
 リビングのドアが開く音がして、樹里はハッと振り向いた。

「ただいま」

 爽やかな笑顔で帰って来た宇宙がいた。

 そんな宇宙を見ると、樹里はムッとした目を浮かべた。
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