彼と彼女の取り違えられた人生と結婚
「ちょっと待って、勘違いしているよ。隠していたなんて、それは違う」
「じゃあどうして? …ずっと探していたのに…」
涙が触れそうになった樹里は、ギュッと拳を握りしめた。
そんな樹里を見て胸が痛んだ宇宙は、樹里の傍に駆け寄った。
「ちょっと落ち着いてくれる? 樹里ちゃん。ここが、どうゆう場所なのか説明するから」
「言い訳なんて聞きたくありません。…お金持ちの人って、隠し事が得意なんですね」
「だから、そうじゃないって」
「いいんです。父もそうでしたから…私が養女である事をずっと隠していた…。兄が言わなければ、私はずっと知らないまま過ごしていたから…」
ワナワナと怒り置押さえている樹里を感じ取った宇宙は、そっと樹里の手を握りしめた。
「樹里ちゃん。一緒に来て」
そのまま手を引いて歩き出した宇宙。
ジュリーヌもその後を着いて行った。
宇宙はそのまま樹里をタワーマンションへと連れて来た。
11階の広いフロアに1軒の部屋がある。
オートロックで開く玄関をはいると、広い土間にサンダルとスニーカーが置いてある。
奥へ続く通路は綺麗な白いフローリング。
通路途中に洗面所とバスルーム、トイレ、洋室が3部屋ある。
通路を通り奥へ行くと。
まるでどこかのサロンのように広いリビングとキッチン。
窓が大きく遠くまで見渡せそうなくらいで、白いレースのカーテンが心地よい太陽に照らされている。
白いテーブルの食卓に茶色い木製の椅子が6個あり、テーブルの中央には奇麗なバラの花が一輪さしてある。
キッチンは綺麗にかたずいていて、シンクも広くて冷蔵庫も大きく食器棚にはブレンド品のお皿やカップが並んでいる。
黒皮の広いソファーにガラスのテーブル。
テレビも大きく映画館のようだ。
サイドボードの上には写真が飾ってある。
その写真は…
ちょっと古くなっているが、宇宙が小さな頃の写真のようだ。
そしてその隣には…
小さい女の子の写真が置いてある。