彼と彼女の取り違えられた人生と結婚
「なに言ってんだよ、お前は樹里から100憶も貰ってんだろう? 」
「はい、そうですが。そのお金は、会社の為に使わせてもらいましたので残念ですがもう手元にはありません」
「だったら! 樹里からもらってこいよ。あいつまだ仕事続けてんだろう? 国家公務員だからな、それなりにもらてんだ。お前が借金あっても、樹里が持ってんだろう? 」
威圧的な言葉にビクともしないで、柊はじっと大紀を見ていた。
「いいか? 俺は樹里の兄貴だ。お前にとっても、俺は兄貴だろう? 」
「ええ、そうなりますね」
「だったら兄貴の為に、金くらい用意しろよ。弟なら、兄貴を助けて当然だろう? 」
「そうでしょうが。樹里さんにお金をお願いするなら、貴方が直接お願いして如何でしょうか? お兄さんなのですから、お願いすれば聞いてもらえると思いますが」
大紀は乱暴に柊を突き放した。
「それができねぇから、お前に頼んでんだろう? 」
「そうなんですね? 」
チッと舌打ちをした大紀は、気に入らないような目をして柊を見た。
「申し訳ございません。お金の事の関しては、俺では力になれませんので。一度、樹里さんと相談してご連絡します」
イラっとして大紀は頭をかき始めた。
ピピッ。
携帯電話が鳴り柊は鞄から携帯電話を取り出した。