彼と彼女の取り違えられた人生と結婚
結婚を決めて樹里は。
「結婚を決めました。100憶ください。このお金で、親の子縁を切って下さい。もう二度と、貴方には関わりません。養女縁組も解消してもらって構いません」
100憶の大金を要求された事よりも、樹里に親子の縁を切ってほしいと言われた事の方が優はショックだった。
結婚して幸せになってくれる事は、優も望んでいた事だ。
望むとおり100憶を用意したが、養女縁組を解消する事はできなかった。
樹里を養女に迎えたいと思ったのは優だった。
ある児童施設で、ひと際目立つ樹里を見かけて何故か忘れられなかった。
ジュリーヌが産んだ子供がいなくなり、ショックを受けていた事もあり、女の子が来てくれたらジュリーヌも元気を取り戻してくれると思い樹里を養女に迎えようと決めた。
だが児童施設側が理由はハッキリ言わないが、樹里を養女に迎えたいと頼むと色んな理由をつけて断って来るばかりで承諾してくれなかった。
法律的な審査が全て通っても承諾しないのは何故なのかと、優は考えたが答えが見つからず。
考えた末に優が思いついたのは施設側に大金を渡す事だった。
樹里を養女にする為にいくら出せば施設側は承諾してくれるのだろうか?
そう考えた時、優が出した金額は100憶だった。
その頃景気が良く業績は右肩上がりで、お金も有り余るくらいだった事から樹里を養女にできるなら100憶のお金などどうってことないと判断したのだ。
100憶の小切手を持って施設に行くと、施設長は非常に驚いた顔をしてしばらく言葉を失っていた。
全く他人の子供を引き取るのに500憶のお金を動かすとは…。
それだけ真剣に、樹里のことを養女に迎えたいと思ってくれていると感激していたくらいだった。
100憶のお金を受け取ったことは内密にしてほしいと施設にはお願いして、寄付金として受け取ってもらった。
やっと樹里が上野坂家に養女として迎え入れられたのは、交渉から1年過ぎた頃だった。
樹里は2歳になっていて、環境が変わり驚いていたがすぐに上野坂家になれてくれて、施設で育ったわりにはとても気品があり顔立ちも上品で一際目立つ子供で周りからも注目されるくらいだった。