彼と彼女の取り違えられた人生と結婚
大紀とジュリーヌ
大紀の笑顔と優の熱い気持ちに押されてしまったジュリーヌは、3ヶ月だけと言って優の気持ちに応える事にした。
ジュリーヌは両親はもういないと言って、家は遠い南の地で今は帰る場所がないと言い出した。
それなら自分の家に来て下さいと優が言った。
とりあえず同居人として一緒に生活を始めた優とジュリーヌ。
靴を履いていないジュリーヌに、履きやすいシンプルな黒いパンプスを買って来た優。
そのパンプスを見たジュリーヌは、何だか珍しそうに見ていた。
靴を履きなれていないのか、初めは履き心地が悪そうにしていたが次第に慣れてきて、他の靴も履いてくれるようになってきた。
大紀はジュリーヌにすぐになれて、ご機嫌の毎日だった。
保育園の送り迎えは優が行ってくれて、家に帰ってくるとジュリーヌが大紀を見てくれてとても可愛がってくれていた。
そして約束の3ヶ月が過ぎた頃。
優は改めてジュリーヌに結婚を申し込んだ。
だが…
「申し訳ございません。私は、貴方と結婚はできません」
「どうして? 」
神妙な面持ちで暫く黙ていたジュリーヌ。
だが重い口をやっと開けて話してくれてた。
「私は…地上の人間ではありません…」
「地上の人間ではない? 」
「はい。私は、地底の世界の人間です。なので、貴方と結婚する事はできません。地上に戸籍もありませんし…住む世界が違いますので…」
地上…地底…。
そう言われても優はちょっと混乱していた。
だがジュリーヌがちょっと不思議な感じがしていた事に、とても納得ができた。
素足で歩いていたのは、住む世界が違うからだったのか…。
「それでも構いません」
優がそう言うと、ジュリーヌは潤んだ目をしてゆっくりと視線を上げた。
「地上とか地底とか、私にはよく判りません。でも、貴女を愛する気持ちは誰にも負けないと言い切れます」
「ですが…」
「貴女は私の事が嫌いですか? 」
嫌い?
そう聞かれるとジュリーヌは胸がキュンとなった。
初めて会った時。
優を見た瞬間、ジュリーヌは胸が大きく高鳴ったのを感じた。
でも住む世界の違う人だからと、その想いを閉まってしまった。
一緒に生活するようになり、可愛い大紀を見ていて、離れたくない気持ちが大きくなっていた。
嫌いなわけがない…私も…愛している…。
ジュリーヌはそう確信した。