冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す


「うちの会社の女性社員にも、岩倉さんを好きな子たくさんいるのよ。岩倉さんは誰に誘われても断ってるみたいだけど、みんな、それでも彼を振り向かせたくて色々頑張ってる。……それなのに、恋人ではないにしても彼の隣を許された出穂さんが、そんな自信のない顔してたら、他の子はどう思うかしら」
「え……」
「岩倉さんに心配してもらえる今が当然だと思わないことね。胡坐かいてたら、誰かに持って行かれちゃうわよ。たとえば私とかにね」

口の端を上げた御法川さんが、「戻りましょうか」と踵を返す。
これ以上岩倉さんたちを待たせるわけにはいかないので、重たい足を必死に進めて御法川さんの後に続いた。

今のは、どういう意味だろう。
御法川さんも岩倉さんが好きなのかな。

食事中からなんとなく感じていた予感が現実に変わっていく。
御法川さんの瞳が、岩倉さんに向けられたときだけキラキラ輝くのは気付いていたから、きっとそうなんだろう。

こんなに綺麗で自分に自信のある御法川さんも、岩倉さんが好きなんだ。

「出穂、大丈夫か?」

戻るとすぐに聞いてきた岩倉さんに、なんとか笑顔を返してうなずく。
岩倉さんはそんな私をじっと見たあと、御法川さんに視線を移した。

「御法川さん、ありがとうございました」
「いえ。たいしたことではありませんので。……ふふ、なんだか名字で呼ばれるのはくすぐったいですね。岩倉さん、いつもは私のこと名前で呼ぶから」


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