冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す


……そういえば。
『恋人ではないにしても彼の隣を許された出穂さんが、そんな自信のない顔してたら、他の子はどう思うかしら』

どうして御法川さんは、岩倉さんと私が恋人ではないと言いきれたんだろう。
岩倉さんはずっと、私との関係をはっきりと言わなかったのに。

「ね。岩倉さん?」と顔を覗き込むようにして言う御法川さんに、岩倉さんは少し嫌そうな顔で「勘弁してください」と返す。

それを見て、あ、と思った。

さっき食事をしているとき、私は、岩倉さんがたいして親しくない人に不機嫌な態度をとるのは珍しいと思った。

でも、それはたぶん、違う。

岩倉さんは御法川さんと親しいんだ。だから、佐鳥さんや私に見せるような感情を表に出したんだ。

『胡坐かいてたら、誰かに持って行かれちゃうわよ。たとえば私とかにね』

私は、どうして今まで岩倉さんに恋人がいる可能性を考えてこなかったんだろう。
私が知っているのは、あの部屋での岩倉さんだけだ。

岩倉さんが、外で誰と会っているか、誰と付き合っているのか、なにも知らない自分に初めて気付いて、愕然とした。


自信も持っていないくせに、甘やかされて与えられてすっかり胡坐をかいてうぬぼれていた自分に、初めて気付いた。





< 132 / 184 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop