冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す


「恋愛は自由だし、男女の友情がどうのって意見もあるけど、私的には、恋人を不安にさせるような行動はまずしないのが付き合っていく中のルールだと思うよ」

江並さんの意見は私が持っている恋愛観と近く、とても納得がいくものだった。

「ですよね……」
「なに? 岩倉さんに恋人の存在でも浮上してきたの?」
「浮上……というか、よくよく考えてみれば、恋人がいてもおかしくないなって……え?」

普通に聞かれたので、私も普通に返してしまったけれど、途中で当然のように私と岩倉さんの話として進んでいることに気付く。

……というか、バレンタインだとかのあたりから岩倉さんの名前が出てたけれど、あれってお世話になっているからとかではなく、そういう意味合いだった……?

慌てて見た私に、江並さんは「ああ、ごめんごめん」と笑った。

「出穂さんが内緒にしたそうだったから私も気付かない振りしたけど、ランジェリーショップの時からずっと相手が岩倉さんだってことはわかってるよ。だから、あえてたとえ話にしなくても大丈夫」
「えっ」
「誰にも言わないし。ほら、現に社内で噂にもなってないでしょ? 心配しなくても、これでも口は堅いから信用してよ」

任せろと言わんばかりに胸を張られる。
私が内緒にしたかったのは、岩倉さんの立場を悪くするんじゃないかと心配したからで、私自身はどうでもよかった。

それに、一緒に働いてきた中で江並さんの人となりはわかっているつもりだったので、「わかりました」と笑みを作り、土曜日の出来事を報告した。

私の説明を「うんうん」と相槌を打ちながら聞いていた江並さんは、全部を理解したあと、難しい表情を浮かべた。


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