冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す


「すみません……」

同居するにあたって岩倉さんが私に課しているのは、ほとんどが私のためにあるルールばかりだと知っている。

岩倉さん自身のためになるものなんてひとつもない。

それなのに、未だそんな簡単なルールが守れない自分を反省してうつむくと、隣で岩倉さんがひとつ息をついた。

「別にいい。急いでいるわけじゃないし、そう簡単に体に染みついた癖が直るとも思っていない。前の会社でのことだけじゃなく、生い立ちも関係してきているなら、治すには時間がかかって当然だ」

伸びてきた手が、頭をくしゃくしゃと撫でる。
隣を見れば、岩倉さんが私を見ていた。

「自分が忍耐強い方でよかった。おかげでつまらない理由で手放さなくて済む」
「どういう意……」
「そのメイクも悪くはないが、いつもの方がいいな」

目を細めて言われ……一瞬その微笑みに見とれてからハッとして口を開く。

「え、ああ……自分ではこんなバッチリメイクはできないので、きっと今後も必然的にいつもの感じです」
「そうか」

パンの香りが充満する車内。
なんでだか岩倉さんの眼差しが絡まるようで、うまく呼吸ができなかった。



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