ずっと甘溺愛婚 ~それでも性悪お嬢様は俺様御曹司に溺愛される~
「……そう。こっちには余計な事をしたくせに《《自分達だけ》》ちゃっかりと仲直りしたのね、あの男は。」
「ふふふ」と上品に微笑んでみせるけれど、怒りのオーラが隠せていないのか月菜さんが少し怯えているように見える。柚瑠木さんは私があの後で聖壱さんにどんな目に合わされたか分かっているでしょうに、それを知らんぷりして月菜さんとイチャついてたのかと思うと……
そんな私を見て、柚瑠木さんに対して怒っているのだと気付いた月菜さんが申し訳なさそうに謝ろうする。
「言っておくけれど、これは月菜さんの所為ではないからね。それに……どうせ謝らせるのならば、あの冷徹男に謝罪させた方がずっと面白いでしょうしね。」
今回の事は月菜さんが悪いわけじゃない、きちんと余計な事をした柚瑠木さんにやり返してやらなきゃ気が済まないのよ。どうせなら思いきりあの冷徹男に後悔させてやりたいじゃない?
柚瑠木さんが悔しそうに私の頭を下げるところを想像するだけで楽しいじゃない。気分がよくなって「ふふん」と長い髪を肩から払ったその時、月菜さんが驚いた顔をして……
「大変です、香津美さん。首にたくさん虫刺されが……」
そう言って月菜さんは私に手を伸ばしてくる。何のことを言われたのか気付いた私は、急いで髪の毛で昨日の痕跡を隠す。いくら純な月菜さんでも、これが何かはさすがに分かってしまうかもしれない。
恥ずかしさに頬が熱くなる。
「いいのよ、これは。月菜さんは気にしなくていい事だから。」
今までの話から、柚瑠木さんと月菜さんの間にそういう行為がない事は知っている。だからきっと昨日の私達の事も、柚瑠木さんはうまく誤魔化したはずだわ。
気付かないで、と心の中で祈ってみたけれど、月菜さんはそのまましばらく固まってしまって……