ずっと甘溺愛婚 ~それでも性悪お嬢様は俺様御曹司に溺愛される~
「……え、柚瑠木さん?」
……ほらほら、やっぱりここまで来たわね。
月菜さんはとても驚いているようだけれど、これももちろん私にとっては想定内。そろそろ柚瑠木さんも月菜さんに対しての過保護な部分を隠せなくなってくるころだと思っていたのよ。
「香津美さん、杏凛さん、妻と話をしていただきありがとうございました。それでは僕と月菜さんは先に失礼させてもらいます。」
さっさと月菜さんを連れて帰りたいと言わんばかりの柚瑠木さん。どれだけ自分が月菜さんに対して独占欲丸出しの行動をとっているのか、まだ気づいていないのでしょうけれど。
いつその気持ちを自覚するのか、それとももう自覚して隠しているつもりなのか。どちらにしても楽しい事になりそうで……
戸惑う杏凛さんと一緒に、連れて行かれる月菜さんに手を振ってみせる。これからあの二人がどうなるのか、ワクワクする気持ちは抑えられない。
「……行ってしまいましたね、月菜さん」
「そうね、でも杏凛さんも早くしないと旦那さんが怖ーい顔をしてるわよ?」
そう、テーブルの横にはまだ匡介さんが仁王立ちしたままなのだ。こんな強面顔の彼が立って待っていたら目立ってしょうがない。
「それじゃ、私も失礼しますね」
いそいそと帰り支度をして匡介さんの手を取る杏凛さん、でもその顔は戸惑いを隠せていない。彼女は匡介さんの行動を「嫌ではない」と言ったはず。でもとても複雑そうな表情で匡介さんついて行く杏凛さんを見て、何か力になれればとも思ってしまう。
「……俺達も帰るか」
二人が帰っていくのを見送った後、聖壱さんが私だけが残されたテーブルに近付いて来る。それだけでほら、こんなに胸が暖かい。
「ええ、そうね。帰りましょうか、過保護な私の旦那様」