ずっと甘溺愛婚 ~それでも性悪お嬢様は俺様御曹司に溺愛される~
「迷惑……とは思っていません。ただ、彼が契約妻の私にそんなに構う理由がどうしても分からなくて。」
……分からない?匡介さんは料理教室の講師が男性だったというだけで、あれほどわかりやすく杏凛さんは自分の妻なのだと牽制しているように見えたけれど。匡介さんは間違いなく特別な感情を杏凛さんに持っているはずなのに、彼女はそれに全く気付いていないの?
今の話で月菜さんはどう思ったのかしら、彼女の方を見ればすぐに目が合って……私が小さく頷けば月菜さんも同じように答えてくれる。月菜さんも私と同じ考えなのでしょうね。
これだけハッキリと態度に出しておきながら、多分匡介さんはそれを言葉として杏凛さんには伝えていないはず。でなければここまで杏凛さんが悩むはずはないもの。
だけどそれを杏凛さんに伝えない、もしくは伝えられない理由が匡介さんにもあるのかもしれない。それなのに私達が勝手に匡介さんの気持ちを杏凛さんに話してしまうのは良くない。
「それなのに、匡介さんはもっと自分に甘えろと言うばかりなんです。今更そんな事言われても、私……そんな時に月菜さんの会話を聞いて、詳しく教えてもらえたらと思ったんです。」
男性が女性に頼って欲しいと望む、そこにはやはり相手への好意があってこそだと思うのよ。だけど私も月菜さんも……そして杏凛さんも可愛らしく甘えることに慣れていない。
でも出来る限り杏凛さんの力になりたくて、私達はああでもないこうでもないと真剣に話し合った。意外と月菜さんが大胆な発言をしたりして驚かせてくれたりもしたけれど。
そんな女三人の楽しい時間はあっという間に過ぎてしまったようで……
「……杏凛、約束の時間になったので君を迎えに来た。もう家に帰るんだ。」
約束した時間ピッタリに杏凛さんの隣に現れたのは、やはり彼女の夫の匡介さん。多分時間の前から待機していたのでしょうね。
だけど、今日の過保護な夫は匡介さんだけではなくて……
「時間ですよ、月菜さん。僕と一緒に帰りましょう。」