ずっと甘溺愛婚 ~それでも性悪お嬢様は俺様御曹司に溺愛される~
「なに? それってどういう……」
まさかそんなハッキリと拒絶の言葉を聞くことになるなんて思ってもみなかった。まだ妊娠が決まったわけじゃなかったけれど、それでも彼は喜んでくれるんじゃないかって思っていたから。
戸惑ったまま聖壱さんに理由を問えば、彼は納得がいかないという顔をして私を睨んでみせる。
「俺に不満があるならハッキリと言えばいい、それが出来ない香津美じゃないはずだ。コソコソと一人で実家に帰って両親と話を進めて……俺がそんなの認めるわけないだろ!」
「ええ? 私は聖壱さんに不満なんてないわよ。確かに私の家族に先に話そうとしたのは悪かったけれど……そこまで怒らなくても」
聖壱さんはいつもの余裕ある俺様ではなく、どこか必死な様子で私の顔を見つめながら肩を掴んでいる。もちろん私が痛がるような強い力ではないけれど、彼らしくない行動だと思った。
……いったい何がこんなに彼を焦らせているの?
「怒るなだって? 無理を言うな、俺が今どんな気持ちか分からない訳じゃないだろ? こんな順調な結婚生活を送っているのに、急に離婚話だなんて冷静でいられるわけない」
「り、離婚話ですって!? いつ、どこでそんな話になったって言うの?」
聖壱さんの様子がおかしかったのは、私達の会話がまるで噛み合っていなかったからなんだわ。彼が焦ったわけが分かって、ホッとしたと同時に身体の力が抜けていく。
色々考えどんな言葉で伝えようかと必死だったのに、遠回しにするべきじゃなかったのかもね。