ずっと甘溺愛婚 ~それでも性悪お嬢様は俺様御曹司に溺愛される~
「ちょ、ちょっと聖壱さん! いきなり何するのよ、まだ話の途中なのに……」
いきなり抱き上げられたことに文句を言いかけたところで、聖壱さんを見上げると私はその言葉を止めるしかなかった。
……想像はしてた、この話をして聖壱さんがどんな反応をするんだろうって。きっと喜ぶ顔が見れるはずだって。
なのに……聖壱さんは私を抱き上げたまま、今までにない程真剣な表情のまま。
「香津美はじっとしてろ、すぐにホスピタルに……!」
このビレッジにはレジデンスやテナントだけでなく、有名人や芸能人に人気のホスピタルもある。それはとても便利でいいと思うのだけど。
「もう聖壱さんは今何時だと思ってるの? 別にどこも痛くも苦しくも無いんだから、病院は明日でもいいのよ」
「しかし、このままじゃ妊娠してるのかどうかが……」
つまり、聖壱さんはすぐにでも私のお腹の中に赤ちゃんがいるのかを確かめたいらしい。もちろんその検査薬は私が持っているので問題は無い。
ただそのための心の準備が出来て無かっただけで。私は聖壱さんに降ろすように伝えて鞄から目的の物を取り出した。
「……これ、妊娠検査薬。これで確かめられるから、聖壱さんは少し待っててくれる?」
私以上にソワソワ落ち着かない聖壱さんを見たら、逆に私の方がしっかりしなきゃって思えてきたの。しっかりしてよね、と思いながら私は検査薬だけを持ってトイレへ。
少し離れた場所て呆けたように立って待っている聖壱さんの姿に笑いながらドアを閉めた。