ずっと甘溺愛婚 ~それでも性悪お嬢様は俺様御曹司に溺愛される~


聖壱(せいいち)さん、私は貴方から頼まれた秘書の仕事にもの凄くやりがいを感じているの。聖壱さんがお腹の赤ちゃんの事を心配なのは分かるけれど、そう簡単に自分に任された仕事を投げ出したくはないわ」

 妊娠しても出産近くまで仕事をする女性も少なくないと妹の【なほ】が教えてくれた。もちろん母子ともに健康であることが前提なのだろうけれど、それも明日ホスピタルで産科医に確認すればいい事だと思うし。
 聖壱さんの形だけの妻だったはずなのに、この会社や彼のために働いて欲しいと言われたことがどれだけ嬉しかったか貴方には分からないでしょうね。

「だが香津美(かつみ)のお腹の子は、将来SAYAMAカンパニーの……」

「まだ男の子か女の子かも分からないのに、お腹にいる時から赤ちゃんにプレッシャーを与えるようなことは言わないで頂戴。この子にはお腹の外の会話だってちゃんと聞こえているのよ?」

 妹から聞いた話をそのまま伝えれば、聖壱さんはぐっと黙り込む。それでも私に何か言いたそうな視線は向けたままだったけれど。

「聖壱さん、私は欲張りなの。元気な赤ちゃんも生みたいし、今までのように聖壱さんの役に立てる妻でもありたい。それでも今まで通りにはいかなくなることもあると思うの、だから……」

「だから?」

 ねえ、こんな時に素直にお願いできるようになったの。性悪で嫌われ者のお嬢様だった私をこんなに変えてくれた聖壱さんならきっと……

「だからね、今まで以上に聖壱さんに守って欲しいのよ。私だけでなくこの子も一緒に」


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