ずっと甘溺愛婚 ~それでも性悪お嬢様は俺様御曹司に溺愛される~
「香津美っ……!」
聖壱さんは人前では絶対見せないくらいその端正な顔をくしゃくしゃにして、返事がわりというように私を優しく抱きしめてくれた。
聖壱さんのそんな気遣いに嬉しさと同時に、この優しさが私だけの物でなくなることへの寂しさも感じてみたり。不思議だわ、自分で彼に言い出したことなのにね。
それにしても……
「ふふ、色男が台無しね。その顔を貴方の取り巻きの女性が見たらどう思うかしら?」
私はちょっと可愛いなと思っていたりするのだけど、他の女性はガッカリしたりするのかもしれない。
「いいんだよ。俺がどんな顔をしてようが、香津美が笑って傍にいてくれればそれだけで!」
そんな事言われたら、私の方が涼しい顔をしていられなくなるじゃない。結局、私は聖壱さんの胸に顔を埋めて自分の顔を彼に見られないようにした。性悪女の私がこうやって嬉し涙を流す時が来るなんて、ね。
「明日、俺もホスピタルについて行きたいんだが……」
「聖壱さんの気持ちは嬉しいけれど、明日は朝から大事な会議の予定でしょう。貴方の代わりに社長をやってくれる人はいないのだから、しっかり頑張って」
そうやって聖壱さんを励ますけれど、本当は私も一緒に居てくれればと思わない訳じゃない。ただ仕事に理解ある社長の妻でいよう、そんな風にこの時は思っていたの。