飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~


 振り下ろされたはずの姉の手のひら、けれど私にそれが届くことは無かった。覚悟したはずの痛みが来ないので、そっと目を開けて見るとそこには父が立っていた。
 普段この部屋になんて来ることのない人、それなのになぜ……?

「どうして止めるのよ、お父様! こんな話絶対おかしいわ、この子が裏で何かしているに決まってる!」

 ヒステリックに叫ぶ姉、私がこの部屋から出てない事を良く知ってるくせに何を言ってるの? それにこんな話って、それが何の事なのかも分からない。

「二階堂の娘として見苦しい真似は止めるんだ、お前はこの娘とは違うんだといつも言ってるだろう?」

 よく見れば姉は手首を父に掴まれていた、どうやら彼女を止めたのはこの人だったらしい。それでも私を守るためではなかったようだけど。

「でも! この話は私に何だって、お父様だって嬉しそうに話してくれてたじゃない」

 嬉しそうに? この人は私以外の子供の前ではそんな顔をする事もあるのね、私が見る時はいつも不機嫌そうにしているのに。全部諦めているはずなのに、それでも胸の奥は少し傷む。
 いい加減何も感じなければ楽になれるのに、なかなかそうはならないらしい。

「分かっている、次こそあの男を説得してみせる。お前を妻にする事がどれだけお互いのためになるかを、あの若造は理解してないのだろう」

 そう話しながら私の事など存在しないかのように、二人は並んでこの部屋から出て行ってしまった。まるで嵐に巻き込まれた気分だと、フラフラとソファーに腰掛け溜息をついた。
 私には伝えられてない大切な話が出ていて、自分がその中に何らかの形で入っている……そんな気がして、余計に憂鬱な気分になった。


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