飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~


「アンタ、勝手にこの部屋から抜け出してるでしょう!」

 さっきの男性が見えなくなるのを待って部屋に戻ると、部屋の扉がノックされる。使用人かと思い扉を開けた瞬間、前に立っていた姉に勢いよく頬をぶたれた。
 驚きと衝撃で目がチカチカする、悪口を言われるのは慣れていたけれど暴力は珍しかった。けれど無視をすれば余計に相手を怒らせるだけ、痛みを堪えなるべく冷静に返事をする。

「何の話ですか? 私がこの屋敷を出たのは柚瑠木(ゆるぎ)兄さんに呼ばれたのが最後ですけど」

「嘘つかないで! 隠れてコソコソ何をしてるのかしらね、あの母親に似て男の人を騙すのが上手そうだものねえ」

 嫌味たらしい言葉にカチンとくるが、ここで反抗したって無意味な事。そんな事をすればこの姉は被害者ぶって兄を呼び屋敷中の騒ぎにしてしまう。
 ひたすらに我慢する、これが私がここで静かに暮らしていくために出来る事。

「嘘かどうか一番よく知ってらっしゃるのは姉さんでしょう? 貴女が一番この部屋にいらっしゃるのですから」

 私を嫌っているこの人は、何かある度にここに来て私に嫌がらせをしたり自慢したりしに来る。私はそれをただ黙って聞いているだけで……

「お黙りなさい! そんな訳ないわよ、それならどうして私ではなくアンタなんかが!」

 今日の姉は機嫌がすこぶる悪い、普段ここまで感情的な話し方はしないのにいったい何があったというの?

「姉さん、私がどうしたんです? きちんと話を……」

「お黙りなさいって言ってるでしょう!」

 そう言って姉がもう一度手を上げる、私は衝撃に備えてギュッと瞳を閉じた。


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