飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
握りしめた拳が震える、でもそれを異母姉の百々菜には気付かれたくはない。気持ちで負けてしまったらこの人の思惑通りになるだけだと歯を喰いしばって耐えた。
「姉さんを選んだりしませんよ、櫂さんは。あの人はそんな風に私達を天秤にかけるような真似をする人ではありません、姉さんこそ櫂さんの事をよく分かっていらっしゃらないのでは?」
百々菜の発言は私だけでなく、櫂さんの事も馬鹿にしているように思えて腹が立った。彼が異母姉の部屋に入ったというのも信じられないし、まして結婚相手に百々菜を選びたかったなんて言うとは思えない。
もしそう考えているのだとしたら、契約結婚の妻である私にあんなに優しくする必要なんてないのだから。
「……信じるか信じないかはアンタの自由だわ。でもねお父様が教えてくれたの、新河さんとの新しい取り組みさえ上手くいけば彼はきっと私の夫になりたがるだろうって」
「お父様が? では、新しい取り組みとは何なんですか」
櫂さんの呼び方が新河さんに戻っている。
つまり櫂さんが直接百々菜にそう言ったのは嘘で、父が異母姉にそう話したというだけなのかもしれない。しかし、櫂さんとの取り組みとはいったい何のこと?
「さあ、そこまでは知らないわ。知っていても教えてあげる気もないけれどね、卑しい子のアンタに邪魔されるかもしれないし?」
どこまでも私を見下し蔑む百々菜だが、それも気が済んだのかバッグからスマホを取り出し操作しだす。多分運転手を呼んでいるのでしょう、彼女はもう私に見向きもしない。