飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
最初から断るなんて選択肢は私には与えられてなんかなった、むしろそれくらいしか二階堂の役に立てる機会なんて無いのだからこの結婚話に感謝しろと言わんばかりで……
だけどこんなの私は想像してない、名前も知らなかったこの人が私の結婚相手だっただなんて。
「はい、私なんかでよろしければ……」
最初から用意されていた返事を、必死に声が震えないように目の前にいる新河さんへと伝える。
今はまだ夫となる人がこの人で良いのか、良くないのかも全く分からない。だけど私には新河さんの手を取る事しか出来ない、今まで暮らしていた二階堂家にはもう私の帰る部屋は無くなったのだから。
「そんな不安そうな顔をしなくてもいい、俺は千夏が嫌がる事をしようなんてハナから思っちゃいない」
大企業の御曹司だというのに、どこか軽さを感じさせる新河さん。こんな誰からでも好かれそうな人が、どうして私なんかを自分の結婚相手に選んだのだろうか?
そもそも普段は屋敷に隠れて生活しているので、私の存在を知っている人なんてそういないはず、それなのに……
「あの……新河さんはどうやって私の事を知ったのですか?」
「……千夏は初めてカフェで会った時、俺の名刺を渡したこと覚えてる?」