飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~


「初めてなんです、こんなに誰かに離れていって欲しくないって思うのは。食事の時間があんなに楽しかったのも、我儘を言ったのも……全部、一緒に居てくれたのが(かい)さんだからだと思うんです」

 私は誰かに自分の思っている事を伝えるのがとても下手で、周りの人にいつも呆れられてしまう。それでも今はどうしても櫂さんに私がどう感じているのかを知ってほしかった。
 自分なりに一生懸命櫂さんにそれを説明したつもりだった、周りの視線なんて気にならないくらい櫂さんしか見えて無かったの。

「私はもっと努力します! 櫂さんが嫌だと思うところは直します! なので私からこんな風に距離を取らないでもらえませんか?」

 感情が昂ってしまい、人通りの多い場所だという事も忘れ大声を出してしまう。私が一気に話したことで櫂さんもポカンとしていたけれど、そんなのお構いなしで彼に自分の気持ちを伝えた。
 言い切った後で後悔や恥ずかしさが襲ってきたけれど、櫂さんの返事を聞くまで黙って彼を見つめた。

「あーもう、千夏(ちなつ)の言動はどうしてそう俺の想像の斜め上ばかり行くんだ? 本当に君は俺の考えてることが分かってないんだな、全く!」

「えっ? ええ……?」

 少しの間あっけにとられていたかと思うと、今度は少し怒った様子で私の両耳を掴んだ櫂さん。だけどそう言っている彼の耳も、何故か少し赤くなっているように見えた。
 もしかして、櫂さんはテレていたりするの?


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