飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
もちろんそれが櫂さんの本心だと思ってるわけじゃない、揶揄われてるんだってことくらいちゃんと気付いてる。でも、でも……!
櫂さんは何度も私に対して好意を持ってるという態度をとってくるから、色々余計なことまで考えちゃうの!
「へえ、ちゃんと覚えてたんだ? 偉いな千夏は、あの様子じゃてっきり忘れてると思ったのに」
ええ。すっかり忘れてましたよ、お風呂に入る前までは。でも私もそこまでお気楽な性格でもなく、今夜の事をしっかり思い出してしまった。
「櫂さんが悪いんです、私に本当はどちらなのか分からないような言い方をするから」
「それはそうだよ。俺が勝手に決めて良い事ならば答えなんて決まってる、選択肢なんていらない。でも、それじゃあ千夏が困るだろ?」
つまり、櫂さんは私の事を……?
だけど最初から今夜のことを決めるのは私という事になっているようで。それならば、なんであんな曖昧な言葉で私を混乱させたのか?
そっとガーゼケットから顔を出し、櫂さんの顔を見つめる。彼はいつものように楽しそうに微笑んでこちらを見つめ返してくる。
つまり……
「こんな経験もない引き籠りを揶揄って楽しいですか? そりゃあ、櫂さんは経験豊富でしょうけれど……!」
まだ彼に揶揄われてるのだと思って、怒ってみせる。こういう時は初心者の女の子を優しくリードしてくれるものじゃないの? 私の読んだ少女漫画はそうだったのに!