飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
「ジジイって貴方、私のお父様が誰か知っているの?」
私の父は二階堂財閥の中では重要なポストに就いており、そんな風に軽くジジイ呼ばわりできるような人ではない。
こんな……私とそう変わらなそうな見た目の男性にそんな呼び方をされるなんて、信じられなかった。
「知ってるさ。二階堂財閥の最高責任者である二階堂 秋の弟、二階堂 萩。兄を支え共に二階堂財閥の未来を担う守護神のような男だと有名だ」
「守護神? あの人が……?」
そんな言葉から最も遠いのがあの父という存在なのでは無いのかしら? 少なくとも私も、私の母もあの人に守ってもらったことなんて一度だってない。それなのに、この狭い世界の外で彼はそんな呼び名を得ていたなんて……
「悔しいか、千夏?」
最初からこの人は私の事も父の事もすべてわかってここに来たのでしょうね。けれど彼も目的は見えない、ただ私への悪意も感じられない。
だから、素直に言ってもいいような気はしてた。だけど……
「ごめんなさい、私があの人に何か感情を持ってもそんなの何の意味もない事なの。悪いけど私はもう部屋に戻るわ」
そう言って窓から部屋へと戻ろうとする。そんな私に彼は少し大きな声で呼びかけた。
「来週の土曜、この時間……また会いに来る。いいな、千夏!」
「困る」と言おうとして振り返ると、さっきの男性は走って行ってしまい暗闇の中に消えていった。今の出来事が夢だったのではないかというほど静かになった庭を見下ろし息を吐いた。