愛の距離がハカレナイ
「挨拶でもしていくか?」

南川課長は会社を指さす。

「いえ、今日は会社には用事がないので。」

さらりと祐介はそう言うと、私の方を見た。

「じゃあ、帰る。」

「えっ?」

「阿里の顔が見られたらそれで良いんだ。痩せてはいるけど、その表情なら大丈夫。」

祐介はやわらかな笑顔を私に向けた後、南川課長の方へ顔を向けた。

「俺の大事な阿里を…、悔しいけれど、しばらく南川課長に預けていきます。だから…。」

祐介の表情が引き締まる。

「阿里を二度とこんな状態にさせないで下さい。さもないと、また俺が戻って来なくてはならなくなります。」

「大丈夫よ、祐介。」

2人の視線が私の方を向いた。

< 119 / 155 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop