君と二度目のお別れをします。
「よかったら、暖乃ちゃんから透也に報告してやってくれる? 透也もきっと、暖乃ちゃんの幸せを喜んでると思うから」
私は彼のお母さんの言葉に頷くと、テーブルの前から立ち上がって和室の隅の仏壇の前に移動した。
遺影の中では、3年前から時を止めたままでいる彼が、やんちゃっぽい猫目でこちらを見ている。
もう写真でしかその顔を見ることができない彼――――、藤沼 透也は私が勤めている会社の先輩で、将来の約束をした恋人だった。3年前、交通事故に巻き込まれて亡くなるまでは。
透也の事故があったのは、彼が営業先から会社に戻る途中のことだった。
横断歩道の向こう側に友達の姿を見つけた小学生の男の子が信号が青に切り替わる間際に飛び出してしまい、そこにトラックがスピードを緩めずに突っ込んできた。
男の子のことを助けるためにトラックの前に飛び出したのが透也で。男の子を庇ってトラックに跳ね飛ばされた透也は頭を強く打ったことが原因で亡くなってしまった。
3年前、透也を突然に失った私のショックは相当だった。まともに食事や睡眠がとれなくなり、一時期仕事にも出られなかった。
けれど3年が過ぎた今、透也の死をようやく受け入れることができるようになった。
透也がいなくなった分を埋めるように、私をそばで支えてくれた人がいたからだ。