君と二度目のお別れをします。
6.愛してます。
新居のカウンターキッチンに、作りたてのクリームシチューの香りが立ち込める。
調理台の広い新しいキッチンは、ひとり暮らしの部屋の簡易キッチンに比べて料理がしやすくてモチベーションも上がる。
今夜は定時すぐに仕事を切り上げてきたおかげで、一貴さんが帰宅するまでに夕食の準備を整えておけそうだ。
シチューのルウを溶かした鍋に牛乳を入れてゆっくりとかき混ぜていると、右肩辺りで空気が揺れた。
『え、シチューのなかにキノコ入ってんじゃん。なんで入れたの? おれ、キノコ嫌い』
耳元で聞こえてきた不満げな声に、眉がピクリと引き攣る。
「私はキノコ好きだから」
『おれに作ってくれるときは、シチューにキノコなんて入れてなかったじゃん』
「透也の好みで作ってるわけじゃないから。食べるのは透也じゃなくて、一貴さん」
『ふーん』
ふーん、って。
『キノコはいれないほうがいいのに』
鍋を見下ろしてながらぶつぶつ文句を言っている透也を横目に見ながら、シチューをかき混ぜるおたまを強く握りしめる。