また君と恋する
気が付くと、まくり上げた袖が落ちていた。

それでもそのまま描き続けていたが、汚れないように気にしながら描くのは大変。

絵具で手が汚れていたので自分では袖をまくれず、一度手を洗うかと顔を上げた時。

「わっ!」

目の前に早瀬君が立っていた。

さっきまでの笑顔はなく、ジーッと私の手元を見ている。

「それ。俺がまくろうか」

「えっ」

「袖。描きにくそう」

あー、えーっと……これは、妄想?

早瀬君のことを考えすぎてこんな妄想を始めたのか、私。

「手、出して」

そう言われて、素直に手を差し出す。

すると、袖をまくる手に温もりを感じた。

ぼっと私の顔が赤くなる。
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