花筏に沈む恋とぬいぐるみ
25話「残り2日」



   25話「残り2日」



 「もう!びっくりしたんだからね。勝手にいなくなるなんて。もしかして魂が違うところにいっちゃったのか、いろいろ考えちゃったんだからね」
 「悪かった。けど、そんな心配する事じゃないだろ」
 「ちゃんと言って!!」
 「わかった。だから、怒鳴るなって……」


 花と凛が一堂との話を終えて店に帰ってくると、雅がかなり心配していたようで店先でうろうろとしていた。
 花が抱えていたテディベアを見て、雅ははーっと大きく息を吐いた。そして、「よかったー」と、弱弱しい声を出しながらヨロヨロと近づいてきた。
 そして、先程のように怒りだしてしまったのだ。あまりに心配だったのだろう。


 「ごめんね。私も一言雅に連絡しておけばよかったね」
 「花ちゃんはいいんだよ。勝手にバックに入ったのが悪いんだから」
 「でも、ほら、何もなかったしね……」
 「凛がそんなに行きたい場所があるなんて、どこに行ってたの?」
 「えっと、そのー」
 「布屋だ。こいつが手芸屋に行くって話してたからこっそりついていった」
 

 花が言い迷っていると、凛がそう嘘を告げた。
 花は一瞬驚きながらも「そうなの」と話を合わせると雅は「それなら俺に言ってくれればいいだろ」と言いながらも納得してくれたようだ。
 どうやら、凛は十三師の所に行った事を雅には伏せておきたかったのだろう。もし話を聞きに行った事を伝えれば、雅だって結果を知りたくなる。けれど、それについては彼にまだ伝える事など出来るはずもなかった。
 もしから、という不確定な情報で、成功するかもわからないのだから。



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