花筏に沈む恋とぬいぐるみ



 「待ってください!初めて会った人の家の中に入ってお風呂に入るなんてできません!私だって女ので……」
 「あー、そっか。そうだよね。あ、でもやましい事はないよ?でも、そういっても信じられないか……」
 「はい。なので、だいじょうぶ……」
 「じゃあ、俺は店の外で待ってる。だから、君は店の中から鍵をかけて。お風呂は、2階に上がって正面にあるからね」


 そういうと、男はポケットから店の鍵を取り出し花に渡すと濡れたテディベアをもって店の外に出てしまう。
 唖然としてしまうが、そこまでやられてしまうと、断る事も出来ずに花は内側から鍵をかけてしまう。



 「お風呂入るためにこの店に来たわけじゃないのに……」


 どうして、こんな展開になった?と、頭の中が疑問でいっぱいだったが、先程から体の震えが止まらなくなってきた。こうなったら厚意に甘えてしまおう。そう思い、「お、おじゃまします」と無人の部屋への扉を開けたのだった。





 
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