花筏に沈む恋とぬいぐるみ
29話「残された者達」





   29話「残された者達」




 最後がどんなに笑顔だったとしても、1度別れてしまえばもう出会う事はない。
 それが、「死」というもの。


 凛と花は、店に戻ってから、ただただ呆然と時を過ごした。
 どんなに待っても雅の声は聞こえてこないし、笑顔も見る事はない。もし、ここでうたた寝をしていると「花ちゃん、ここで寝ちゃったら風邪ひくよ?」と、声を掛けてくれそうな気がして目を瞑ってみるが、雅は来てくれない。


 そんな事を考える度に、瞳からはポロリと涙が零れ落ちる。
 それを拭う気持ちにもなれず、花はただたただ雅の面影が残る店で、彼の死を今さら感じてしまっていた。

 その別れはとても大きくて重い。


 時々、凛の方を見てみるが、ここに戻ってきてから、ずっと同じ姿勢のままテーブルに置かれたテディベアを眺めている。
 それは、凛の魂が宿り49日間、体となり生活をしたテディベア。そして、昔に雅と凛が初めててぬいぐるみ作りをして、花浜匙の元店主である雅の祖父に認められたテディベアだった。


 それを無表情のまま、じっと見つめていた。


 出会ったばかりの花でさえも、ショックを隠せずにいるのだ。ずっと共に過ごしてきた凛の悲しみは計り知れないところだろう。

 そっとしておきたかったけれど、凛はほとんど数日寝ていないはずだ。寝なくても大丈夫だからと言っていたが、魂の移行もあったので彼の体も心配であった。


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