花筏に沈む恋とぬいぐるみ



 「でも、休みの日は店を手伝わせてね。ううん、働かせてください!しっかり覚えていくから」
 「あまり気にするな」
 「……え」
 「花は、one sinで仕事をこなす事を優先していいんだ。きっと、まだ大変な環境である事には変わりわないんだ。だから、そっちに慣れるのが第一だ」
 「でも………」


 凛は自分の状況を案じてくれている。だからこその発言だともわかる。
 けれど、必要とされていないように感じてしまう。雅の思いを継いで、花もこの愛らしいテディベアを作り広めていきたい。多少の無理なんて、どうって事はない。凛も同じなのだから。
 だから、突き放さないで欲しい。

 そう思い、抗議の声を上げようとした。
 が、それより先に凛の言葉が優しく降ってくる。


 「one sinは一流の商品、そしてデザインを見て、接客を学んで、この店でいかしてくれ」
 「それって………」
 「花の力、頼りにしてる」

 
 いつもぶっきらぼうな口調だけで、彼の表情はわからなかった。
 けれど、今目の前いる彼は、綺麗な真っ黒な瞳を細め、口元hやわらかい孤を描き、穏やかに微笑んでいる。雅と似てるけれど、少し違う。体の中に入っている魂が違うだけで、やはり雰囲気は変わるのだ。
 雅は柔らかな雰囲気であったが、凛はどちらかというと男らしい色気のあるような艶のある笑み。
 どちらも優しい笑みなのには変わりがない。どちらも好きな花の笑顔だ。


 「が、頑張る!私も花浜匙に一員になれるように!」


 凛は花を突き放したわけではない。花の未来も、一緒に考えてくれている。
 店と一緒に、凛と一緒に、どうやれば最善の道なのかを見据えてくれている。
 それが嬉しくて、思わず声が大きくなってしまう。

 そんな花を見て、凛は笑いながら頭をポンポンッと撫でて「もう一員だろ」と、一番の嬉しい言葉をくれる。


 凛にとって、ひと匙はひと匙でも大盛りの安らぎと幸せをあげられる、テディベアのような存在になろう。


 花は、強くつよく決心したのだった。





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