花筏に沈む恋とぬいぐるみ



 喜んだのもつかの間。

 凛の言葉に、花は驚きのあまりに声が洩れてしまった。真夜中はとても静かだ。その小さな声さえも、工房の中の2人は届いてしまう。凛もクマ様は、驚いた様子で後ろを振り向いた。


 「花ちゃんっ!?どうしてここに……」
 「………聞いたのか……?」


 クマ様はもう誤魔化すのは無理だと思ったのか、そう問いかけてきた。花は「そんなはずはない。きっと、何かの間違えだ」という気持ちが真実になることを願いながら、コクンと頷いた。

 すると、凛は「そっかー。バレちゃったかー」と、困った表情で微笑んだ。
 そして、花の方を向いて、聞きたくなかった本当の奇跡の話を教えてくれた。





 「クマ様じゃなくて、俺が四十九日の奇なんだ。……俺がもう死んでるんだ」




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