花筏に沈む恋とぬいぐるみ
19話「泣き虫」




   19話「泣き虫」



 「凛さんが、四十九日の奇………?」
 「今まで黙っててごめんね。俺は話しても良かったんだけど、クマ様が話さない方がいいんじゃないかって頑なでね」
 「………」
 「そんな、どうして?凛さん、いなくなっちゃうの?そんなの嫌だよ……」


 目の前が歪む。
 これ以上悲しい事を聞きたくない。そんな強い思いから耳を塞ぎたくなる。
 悲しみと驚きで声を荒げたくもないのに、動揺から自分の気持ちを抑えられない。

 情けない姿を見せてばかりの花をけなす事もなく、凛は優しく微笑む。


 「ありがとう。俺の事をそんなに惜しんでくれて。四十九日の奇の事よりも、俺の死を悲しんでくれるなんて、花ちゃんは本当に優しい」
 「そんなの、当然の事だよっ」
 「………うん、花ちゃんはそういう子だから。だから、安心してクマ様を任せられるね」
 「………そんな事、言わないで」
 「勝手に人の事を任せないでくれ。俺は一人でこの店を守れる。絶対に、だ………」
 「そうかもしれないね」


 クマ様は動揺をしている花とは真逆で悲しい程冷静だった。この時が来るのを予感していたのだろう。
 そんなクマ様を、何故か申し訳なさそうに見つめる凛。その視線と同じように、穏やかな声でクマ様に問いかける。



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