花筏に沈む恋とぬいぐるみ
凛は先程から口数も少なく、しゃべったとしてもイライラしているようだった。花に話すつもりはなかった事を知られてしまったからなのだろうか。
偶然とはいえ、勝手に話を聞いてしまった事を花は申し訳なくなってしまう。
「クマ様、じゃなくて凛さん。その、ごめんね。その大切な四十九日なのに、邪魔ばっかりして……」
「………別に。雅が楽しそうにしてるんだからいいだろ」
「そうだけど………」
「花ちゃん。大丈夫だよ。凛は、心配してくれているだけだから、ね」
「うるさい」
「ふふふ。凛は優しいけど照れ屋なんだよ。クマ様だとわからないけど、きっと今は真っ赤になってると思うよ」
「なってないッ!」
大声を出してムキになっているところを見ると、雅の言葉は当たっているのだろう。
花は思わずクスリと笑ってしまう。こんな時に笑ってしまうなんて、と、すぐに表情を硬くする。が、雅の視線を感じそちらも見ると、雅の安心した微笑みが見えた。
残り約1週間。実際は死んでしまっているけれど、この世から離れるタイムリミットが近づいている。
雅は今、どんな気持ちなのだろうか。
花は彼を見るだけで、心が苦しくなる。
「凛はね。四十九日の奇の事についていろいろ調べてくれているんだよ。そして、俺をどうやったら供養できるのかって試してみてくれたんだ。お経を唱えて貰いにお寺さんに行ったり、クマ様を燃やして自分の魂が自分の体に戻ったら、俺が出ていけるんじゃないかと考えて自ら火に飛び込もうとしたり、ね」
「ま、まさか川に落ちたのも………」
「そう。あれは俺が落としたんじゃなくて、凛から飛び降りたんだ。桜を見に行きたいって言われたから橋まで連れていった瞬間、突然川に向かって飛び込んだんだよ。本当にびっくりしたよー。そして、花ちゃんもクマ様を助けようとして飛び込むし、そして何故か怒られちゃうしね」
「ご、ごめんなさい………」