花筏に沈む恋とぬいぐるみ
父親が亡くなり、母親も離れて行ってしまった。そんな時、自分は一人きりなのだ。そう思っていた。
何をしても人の目が気になり、笑っている人を見ると、自分が嘲られているのではないかと不安になる。
楽しい事も何もなく、ただただ呆然と過ごすか、現実から逃げるためにただ寝て過ごす日々だった。
けれど、1歩自分から外の世界へ踏み出した途端に、こんなにも自分の傍に居てくれる人がいるのだと気付かされた。味方をして、応援してくれる。
花を1人の人間として見てくれる。乙瀬家の娘、という肩書だけではない。自分自身を。
岡崎との電話を切った後、花は手で流れそうになった涙を拭った。
人に優しくされると、最近すぐに泣いてしまっている。
これでは、凛や雅にまた「泣き虫」と言われてしまう。
花は、立ち上がり棚からレース編みの道具を取り出した。
今、自分が出来る事をしよう。
花はそう決意して、黙々と真っ白なレースを編み始めた。ただ寝ていても、隠れていても何も変わらない。行動すればいつか何かのためになる。
自分がそうであったように。
それだけを考えて、花は夜になるまで編み続けた。
けれど、もう1つの考えなければいけない事は、まったく解決策が浮かばないのだった。