極上パイロットの赤ちゃんを溺愛初夜で宿しました

忙しなく目を泳がせたが、並んで歩く桐谷は気づいていないだろう。向かい合って話していなくてよかったとつくづく思う。


「じゃあ、俺の見間違いですね。あ、ところで仕事が終わったら、ご飯でも食べにいきません?」
「行きません」
「即答しないで少しは悩んでくださいよ。いつなら行ってくれるんですか?」


またいつもの挨拶の一環がはじまった。

ふたりの話し声が聞こえたのか、前を歩いていた翔が振り返る。美羽を見て、その隣の桐谷にも視線を投げてから前を向いた。
ものの一秒だったが、どことなく冷ややかな眼差しだ。

もしかしたらうるさく騒ぎ過ぎただろうか。美羽も桐谷もよく通る声だから余計かもしれない。


「それじゃ、私はこっちだから」
「あぁっ、藤倉さん! 今日はカウンター業務で一緒ですからねー!」


ロッカールームの前に到着したため、桐谷にひらりと手を振ってドアを開けた。
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