極上パイロットの赤ちゃんを溺愛初夜で宿しました
何気ない日常が激変したのは、十一月まで間もなくというある土曜日のことだった。
美羽は高級として名高い、外資系ホテルのイタリアンレストランにいた。
およそ十あるテーブル席には女性がひとりずつ座り、向かいの席に代わる代わる男性がやって来てはアピールを繰り広げる。持ち時間はひとり当たり五分。たったそれだけの時間で好みの男性を選んでおいてほしいという。
美羽は、初めて婚活パーティーなるものに参加中である。
今日は、贅沢なレース使いが上品なサーモンピンクのワンピースを着て、仕事中はシニヨンにしている髪をハーフアップで緩くまとめてきた。〝婚活で男性に好印象を与える服装はこれ!〟というネット記事に従い、忠実に再現したスタイルである。
結婚なんてまだまだ先、恋愛も今は必要ないと考えていたが、抜き差しならない事情が発生した。
「こんなにかわいい女性と出会えるなんて僕はラッキーだなぁ」
目の前に座った三十代後半の男性が、美羽を見て屈託のない笑みを浮かべる。手元に置いた写真付きの自己紹介カードには銀行マンとあるが、お堅いイメージの仕事の割に少し軽そうだ。
「いえ、そのようなことは……」