販売員だって恋します
最初はお互いの立場を理解できる人と出会えることはないから、この子と付き合ったら楽かもしれない、ぐらいの気持ちだった。

それがハキハキした物言いが、サッパリしていて、一緒にいて心地よくて、仕草も洗練されていて笑うと可愛くて。

あの白いワンピース姿は、眩しくて仕方なかった。

グリーンと白のコントラストが綺麗で「靖幸さん」と呼ぶ声が嬉しくて、
彼女にずっとそう呼ばれたら……そう思った。

彼女はあの場にいた男性の目を釘付けにしていて、その視線の中彼女に寄り添うのも、人前から攫うのも、正直に言えばとんでもなく気分の良いことだったのだ。

まさか目の前で攫われる、なんていう事態になるとは思わなかった。

あの時ちょっと……と席を外した由佳を追いかけたかった。

しかしあの場にいたのは、今後老舗デパートを背負うであろう御曹司だ。
気にはなったけれど、後を追うことはできなかった。

成田翔馬の秘書が追っていった姿は、見たけれど。

その後戻ってきた由佳を見て、明らかに様子が変わっていて神崎は歯ぎしりした。
──なにがあったのかな?ゆーちゃん……。
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