販売員だって恋します
本人にその意識はないかもしれないが、そうなのだ。

だから、周りをとても魅了する。
だから、守ってやりたくて。

今日、あの場に神崎雅己を呼んだのは大藤だ。

実を言えば、最初のコンタクトでは門前払いだった。

それを根気よく、事情を説明し現状を説明し、何とかあの場に引きずり出したのが正しい。

門前払いだった神崎雅己が、最終的に話を聞いてくれたのは大藤が成田家と密接に関わりがあることと、神崎自身の『くすだ』への思い入れだった。

成田家の歴史が『くすだ』の歴史が、過去が自分を救ってくれたのだ。
今回動いたことで、それを背負って立つということに、改めて畏怖畏敬を覚えた大藤だった。

それも踏まえて、由佳の兄である絋に会いに行ったのである。
事情も説明を受けた上で、最終的な判断は絋に委ねた。

自分にできるのは、ここまでだ……と。

そう思っていた。
< 179 / 267 >

この作品をシェア

pagetop